スマホで普及しつつあるHDR動画の魅力を解説

投稿日時 12月 14th, 2022 by juggly 投稿カテゴリ » Androidニュース, ピックアップ記事
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スマホユーザーの皆さんは、スマホの動画を鮮やかで高画質の映像で残せる HDR 機能を使っていますでしょうか? 機能が存在することは知っていたけど使い道がよくわからない、互換性や編集のハードルが高くて避けている方が殆どだと思います。しかし、時と場合によっては映像を驚くほど美しく記録することができ、映像の視聴体験が向上します。今回はそんな HDR でスマホ動画を撮影することの素晴らしさを実例を交えて紹介したいと思います。

次の動画は Galaxy S20 で HDR 撮影したサッカーの試合映像です。HDR 対応スマホで再生を始めると、ディスプレイの輝度が上昇し、映像中の芝生の緑や選手の着用しているユニフォームが鮮やかに見えると思います。もしこれを HDR ではない方法で撮影した場合、明るいハイライト部分の色が白っぽく見えてしまいます。HDR ならそんなハイライト部分にもしっかりと色が載り、全体的に美しく見えます。こうした違いが通常の動画と HDR 動画の画質差になります。

別の例として、PayPay ドームで実施された光のセレモニーを HDR10+ で撮影した映像を紹介します。HDR に対応したスマホで視聴すると、ライトやイルミネーション、花火の色がそこそこ鮮やかに見えると思います。

HDR 動画を視聴するにはスマホ側も HDR 再生への対応が必須となりますが、最近出た多くのスマホはハイエンドモデルを中心に幅広く対応しており、スペックシートに HDR 対応と記載されていれば問題なく再生できるはずです。

スマホの動画を HDR で撮影するには、カメラアプリの設定で動画の撮影モードを HDR に切り替えるだけです。Galaxy S20 の場合は HDR10+ という HDR フォーマットに対応しており、モードを切り替えた後は単純に動画を撮影するだけとなります。

HDR の再生が可能なスマホは、HDR10 やサンプル動画の HDR10+、Dolby Vision、HLG といった HDR 規格に対応しています。HDR10 は業界標準の HDR 規格なので、大抵のスマホは HDR10 やその発展規格である HDR10+ に対応しており、そのうち一部の機種は Dolby Vision や HLG にも対応しています。HDR10/HDR10+ と Dolby Vision は同一方式の別規格ということもあって両方をサポートしたスマホはあまり多くありません。といっても、AQUOS R5G は Dolby Vision、HDR10、HLG に対応してたりしますが・・・

現代のスマホは、専門知識無しで HDR 動画を撮影し再生できます。HDR 動画を編集するには HDR 対応ソフトが必須なのでハードルは高いですが、編集をしなければ普通の動画と同じように扱えます。

この時期は全国あちこちでイルミネーションやライトアップのイベントが催されます。暗闇を彩り、辺りを幻想的な雰囲気で包むイルミエーションの記録に HDR は最適です。HDR 対応スマホをお持ちの方はこれを機に HDR モードでの記録にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。

記事の本題は以上となりますが、追加で HDR に関してもう少し詳しく説明したいと思います。

そもそも HDR とはなんぞや? と思う方は少なくないと思います。HDR とは、ハイダイナミックレンジの略称です。さらにその中のダイナミックレンジとは、受信した信号の最大値と最小値の比率を指します。スマホもそうですが、カメラは光を感知して色を再現しますので、HDR は識別可能な光情報量(すなわち輝度)が多いと言い換えることができます。光の情報量が多ければそれだけ色を多く再現できますので、HDR は広い色域で映像を記録再生することになります。

これまでの説明の中で HDR が何に対して多くの色を再現できるのかに触れていませんでしたが、比較されるのは SDR、標準ダイナミックレンジになります。SDR はブラウン管テレビが主流だった時代に策定されたテレビ向けの映像規格です。SDR では、輝度の最大値である白を再現する輝度を 100nits とし、8bit、約 1,677 万色の色を再現します。一方、HDR では伝送方式によって違いはありますが、HDR10 や Dolby Vision といった PQ 方式なら最大 10,000nits、HLG なら最大 1,000nits の輝度情報の規定がなされており、色は 10bit(または 12bit 以上)、約 10 億色以上の色を再現できます。SDR と HDR では表示できる色の数に大きな差があり、この差が画質の違いに現れてきます。

HDR10、HDR10+、Dolby Vision は PQ 方式の HDR 規格であり、HLG は伝送方式の異なる別の HDR 規格となります。PQ 方式は輝度と色の関係性が一定の絶対値方式となっており、視覚特性に優れているのでクリエイターが意図した画質を視聴者に届けられます。そのため、PQ 方式は映画やアーカイブ目的の高画質映像で広く用いられています。Amazon プライムビデオは HDR10 を、Netflix は Dolby Vision を HDR 配信で採用しています。

一方、HLG はテレビやディスプレイとの互換性を重視した HDR 規格で、映像のピーク輝度が再生するディスプレイの上限輝度に応じて上下してガンマカーブを描きます。これは、HDR の映像を古いテレビでも見ても問題なく映るように互換性を持たせる為の仕様で、その結果、HLG はテレビのスポーツ中継やライブ配信など、様々な機器で視聴されるようなコンテンツで広く用いられています。つまり、HLG は放送向けの HDR 規格となります。比較的最近始まった衛星放送の 4K8K 番組は HLG で放送されています。

現在、HDR の普及は過渡期にあると言えます。徐々に採用が拡大しており将来的には HDR で動画を視聴するのがごく当たり前の社会になると予想されます。そういう時代に過去を振り返ると、HDR で撮影したかどうかで印象は大きく変わると思います。古い映像を見てノルタルジーに浸るのもまた一興ではありますが、過去を鮮明に振り返ることのできる HDR は未来の我々にリアルな記憶を映像として見せてくれて、ある種の感動体験を味わわせてくれると思います。

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