DJI Mavic 2 Zoomのレビュー

投稿日時 10月 15th, 2018 by juggly 投稿カテゴリ » Androidニュース, ピックアップ記事, ブログ
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8 月下旬に国内外で大々的に発表された DJI の個人向け最新ドローン「Mavic 2 Zoom」を入手したので本製品のレビューをお送りしたいと思います。

Mavic 2 Zoom は同時に登場した Mavic 2 シリーズの一つで、その特徴からズーム対応モデルだったり、Mavic 2 Pro よりも 2 万円ほど安いのでその下位モデルとも呼べます、2016 年に発売された Mavic Pro の後継モデルとなっており、DJI での位置づけや機体デザインは殆ど変わりありませんが、2 年半ぶりの新型ということで中身は大幅に変わっています。

Mavic 2 の購入を検討している方がまず悩むのは 「Mavic 2 Pro と Mavic 2 Zoom のどちらにすべきか」 だと思います。私は Mavic 2 Zoom の方を選択したわけですが、それには次に示す理由があります。

ドローンユーザーの多くは私のように趣味でドローンを飛ばす人たちなので、そういう人たちがドローンを使った空撮において最も満足感を覚える時と言えば 「映画のワンシーンのような美しい映像」 を撮影できた時、「誰も撮ったことのないようなありえな映像」を撮影できた時だと思います。

そもそも私が Spark や Mavic Air の画質で十分満足していることもありますが・・・、Mavic 2 Pro よりもカメラスペックの低い Mavic 2 Zoom でも画質は ND フィルターを使うとか、編集ソフトで調整するとかである程度なら改善できる話で、上に挙げた前者の方は既に達成していると言えるでしょう(画質面で)。それならズーム機能によって後者の満足度も高めやすい Mavic 2 Zoom にするのが自分的に良いと判断したのです。

私の勝手な推測ですが、DJI の人たちも上記に挙げたニーズの違いによってモデルを分けたのではないかと推測しています。両方を十分に満たす機体は価格が跳ね上がってしまいますし、DJI には既にそれが出来る Inspire もありますからね。また、モデルを分けることで Phantom や Inspire に導こうとしているんじゃないでしょうか。

もし、カメラが趣味だという方なら風景の撮影で使用するカメラ選びをイメージすると判断しやすいかもしれません。Mavic 2 Pro は高級な単焦点レンズを装着したフルサイズ一眼、Mavic 2 Zoom は絞りを変更できない標準ズームレンズを備えた APS-C 機に置き換えることができます。

フルサイズ一眼だと、露出はフルに制御できるので作り出せる写真の雰囲気は思いのままです。一方、APS-C 機では絞りを変更できないので、露出は調整しづらいもののズームには対応しており、単焦点レンズと同じ画角で撮影することはもちろん、近くにいる鳥さんや草花に寄って撮影することもできます。

どちらが良いのかはその人次第となりますが、例えば SNS や YouTube に空撮動画をアップしてシェアするだけで満足という方は Mavic 2 Zoom で構わないのではないでしょうか。Mavic Pro や Phantom 4 からの乗り換えだと話は少し変わってきますが、DJI ドローンは初めてという方ならたぶん Mavic 2 Zoom のカメラでも画質には十分満足できると思いますよ。

前置きが少し長くなりましたが、いよいよ本題に入ります。

Mavic 2 の購入を検討している人の中には Spark や Mavic Air から乗り換える方も多いはずなので、本レビューではそうしたエントリー機から乗り換えた場合にどう違ったのか、メリットは何なのかを中心にしています。

私が皆さんにお伝えしたいことは、「ワンランク上の安定感」、「バッテリーは 2 本で十分」、「ズームは思ったよりも役立つ」 この 3 つです。最初の 2 つは Mavic 2 Pro にも共通して言えることなので、そこでは 「Mavic 2」 と表記することにします。

ワンランク上の安定感

Spark や Mavic Air のユーザーさんの中で 「たぶん飛ばしても大丈夫だろうけど、一応安全のために今日のフライトはやめとこうかな」 と思う時ってよくありますよね? Mavic 2 ならそう思う時でも 「なーんだ、普通に安定しているじゃん」 と感じる安定感で飛行していました。この時、横風でプロペラノイズは乱れますが、機体が乱高下することは殆どなく、無風時と同じように安定飛行していました。

安定感が増したのは 905 / 907g というどっしりとした機体重量だったり、大型プロペラによる比較的強い推進力、また内蔵センサーやビジョンシステムを含む内部コンポーネントの基本設計が新しいことが影響していると思います。大きさや重さはそのまま携帯性に影響してきますが、安定性は携帯性を犠牲にしてでも欲しい要素なのでこの点を問題だと感じる方は殆どいないと思います。

余談ですが、私はニュースで 「今日は春一番でした」 と報じられる強風の日に Spark を飛ばした経験があります。この時、Spark は無事に離着陸したものの、風が強い過ぎてホバリング中でも機体は傾き(元の位置に戻ろう頑張るため)、大きく上下するわはヒヤヒヤしましたね。Mavic 2 でそういう強風の日のフライトは実行していませんが、この安定感なら Spark よりも安心して飛ばせるだろうと見ています。つまりこれが DJI ドローンの高い安定性ということです。

趣味のドローンフライトならバッテリーは 2 本で十分かも

Mavic 2 のフライト時間はメーカー発表だと 31 分です。これは一定のスピードで揚力を得ながらフライトさせた時の値で、現実にはホバリングの時間が多くを占めますから、いつもメーカー発表のフライト時間が出ることはありません。それでも、フライト方法を意識することなく Mavic 2 Zoom を飛ばしたところ、バッテリー残量 10% になった時点で着陸させると、その時のフライト時間は約 25 分でした。

同じ感覚で Spark や Mavic Air をフライトさせた場合、経験的に Spark は最長 13 分、Mavic Air は最長 19 分のフライト時間だったので、Spark 比で 2 倍、Mavic Air 比で 1.3 倍も長くフライトできたことになります。フライト時間が長ければその分、機体の移動に余裕が持てますし(同じ時間だとより遠くに飛ばせる)、撮影に費やせる時間も長くとれます。

Spark や Mavic Air で一日のドローンフライトを楽しむとすればバッテリーは少なくとも 3 本必要だと感じますが、Mavic 2 だったら 2 本で十分かなという感じです。

いろんな用途で使えるズーム機能

もはや本記事はズーム機能の魅力をお伝えするために作ったと言ってもいいほどです。

まずズームの仕組みを簡単に説明しますと、Mavic 2 Zomm は焦点距離で 24~96mm の範囲でズームすることができ、24 ~ 48mm までは光学ズーム、49~96mm まではデジタルズームが働きます。4 倍ズームです。

広角端から望遠端に渡ってのズームはとても滑らかで、ズーム操作もカメラジンバルと同じダイヤルを使います。カメラのように細かくズームスピードの設定を変更することはできませんが、動きもジンバルと似てリニアです。

Mavic 2 のカメラは下方だけでなく上方に 30 度チルトしますし、フライト画面を長タップして左右にスライドさせるとパンします。機体を止めてカメラパンも可能ということです。動きは下方へのチルトと同じ漢字です。

私が思うズームの用途は大きく分けて次の 5 パターンです。

1. 単純に被写体を拡大して撮影したい
2. 画角を決めて撮影したい
3. 画角的に動きのある映像を撮影したい
4. 調査に使用したい
5. 被写体を探したい

DJI の製品ページを見ただけだと 「1」、「2」、「4」 の用途しか気づかないと思いますが、私は 「3」 と 「5」 にも気づきましたし、空撮や映像のプロなら他にもっと多くの用途を見出すことができると思います。それほどズーム機能のポテンシャルは高いということです。

「1」 と 「2」 ズームを使用すれば開けた場所だと 1~2km 先をズームしない時と同じサイズ感で撮影でき、河川や滝、遺跡、ランドマークといった普段はなかなか近づけない物や場所でもズームすることでけっこう寄せることができます。また、野生の動物は警戒心が強くて近づきづらいと思うところ、Mavic 2 Zoom なら動物たちをびっくりさせることなく大きく映せると思います。

「3」 例えば、アクティブトラック中にズームを利用すると、クイックショットの「Helix」を再現できますし、製品ページにも記載されている「ドリーズーム」で撮影することもできます。ズームの動きはとても滑らかなので、ズーム途中の映像も素材として活用することができます。

「4」 工場やビルだと、屋根、天井、壁の高い部分、高いところの照明だったり、ソーラーパネル、鉄塔、煙突、高架などの定期的な調査やメンテナンスを必要とする建造物ではある程度安全な距離を保ちながら最高数センチのオーダーで細部を確認することができると思います。

また、地上をズームすると、例えば広大な畑の作物を確認することもできるでしょう。次の写真は離れ過ぎて細部のチェックというところまでは出来ませんが、距離をこの時の 3 分の 1 にまで詰めるとおそらく水の流れをハッキリと捉えることができるでしょう。

また、Mavic 2 Zoom 特有の 「超解像度」 機能も調査系の業務に活用できます。この機能はズームしながら 9 枚の写真を撮影しそれらを合成して 4,800 万画素の大きな写真にする機能です。単純に大きな写真だったり、クロップして一部をシェアする用途に使用できますが、例えば、建物や地面を超解像度モードで撮影すると、通常よりも細かい部分まで見ることができますし、グループセルフィーだと人物をより鮮明に撮影することができそうです。

「5」 ドローンフライトでスマホを使っていると画面は小さいので被写体が探せない場合もあります。その時、ズームすると少しは探しやすくなるでしょう。また、ズームした状態で周囲を見渡していると、ぜひ空撮したいと思う被写体の存在に気づけるかもしれないので、そういう時に 「ズームあって良かったな」 と思うはずです。他にも、ズームで位置決めしてから撮影することにも活用できます。

以上のように、ズーム機能は様々な場面で威力を発揮するので、実際に飛ばしてみると多くの方は私と同じように 「ズームって意外と使えるな〜」 と感じるはずです。

これ以降は触れておきたい Mavic 2 Zoom の機能や魅力をご紹介します。

Mavic 2 シリーズの特徴の一つが 「ハイパーラプス動画」 の撮影に対応している点です。ハイパーラプスとはカメラも動くタイムラプスのことで、カメラの向きも変わるならそれはモーションラプスと言います。

具体的に、ハイパーラプス機能はインテリジェントフライトモードの一つとして組み込まれており、「フリー」、「サークル」、「コースロック」、「ウェイポイント」の 4 種類から撮影方法を選択できます。
の撮影方法が選択できます。

ユーザーは基本的に撮影方法、撮影感覚、動画の長さを設定から選び 「Go」 ボタンを押すだけで後はドローンが勝手に動画のレンダリングまで行ってくれるので利便性はとても高いです。

DJI はハイパーラプス機能を Mavic 2 の目玉の一つとして宣伝していますが、個人的には要らないかなと思っています。理由は単純です。空撮の動画でタイムラプス系のクリップを使わないからです。

ドローンにおいてハイパーラプス動画は風景の移り変わりや機体移動の様子をアーティスティックに表現する方法の一つとして用いられていることから、そういう作品でのニーズが高いことは承知していますが、私個人でそれは必要ないということです。

まあでも動画の仕上がりはとても綺麗ですし、ハイパーラプス動画は観てて素朴に面白いと思います。ただ、海外と比べて日本はドローンを飛ばせる場所や無許可で飛ばせる場所が少なく、機能を活かす機会が少ないことから国内でハイパーラプス機能は流行らないかもしれません。

ちなみに、Mavic 2 では 5 秒間のハイパーラプス動画を撮影するのに約 4 分もかかります。撮影の間は暇です。というか、普通に飛ばして色んな動画を撮影した方が良いとさえ思いました。

実態を掴みづらいのでピンと来ないかもしれませんが 「OcuSync 2.0」 は素晴らしい新機能だと言えます。これは送信機と機体間の FPV 映像の伝送に用いられている無線技術のことで、OcuSync 2.0 になってより安定して FPV ビデオを受信できるようになり、画質はとても滑らか、しかもフル HD 伝送に対応しているので(通常は HD 伝送)、FPV ビデオですら細部まで良く見えます。

ビデオキャッシュの画質もフル HD となるので、そのまま SNS でシェアしようかなとも思ったりします。ただ、キャッシュの映像ビットレートが 10 ~ 15Mbps 台なので、メモリに保存された記録映像の方が画質は良いです。

従来、送信機の右側面にある飛行モードスイッチは 「スポーツ」 と 「ポジション」 の 2 つだけでしたが、Mavic 2 から 「トライポッド」 が加わり 3 つになりました。これで単純にモードスイッチの切り替え動作でトライポッドモードに切り替えることができます。

トライポッドモードが利用しやすくなったので、例えば、スポーツモードかポジションモードで機体を目的地付近までサッと飛ばし、トライポッドモードで位置を微調整するようにすると効率的に撮影準備ができると思います。

ちなみに、モードスイッチを上下に何度かカチャカチャするとコンパスのキャリブレーション画面が表示され、キャリブレーションを迅速に実行することができます。

上記の他、送信機にはモバイルバッテリー機能も搭載されており、スマホのバッテリーが 40% を下回ると送信機のバッテリーを使ってスマホを充電することができます。

インテリジェントフライトモードの画面には次の 7 つのモードが表示されます。海外モデルにはウェイポイントも表示されますが、日本モデルにはありません。「Coming Soon」 とも表示されていません。

最後になりましたがビジョンシステムについて説明します。

Mavic 2 には前方、下方、後方にステレオカメラのビジョンセンサー、左右の側面にシングルカメラのビジョンセンサー、上方に赤外線センサーが搭載されており、上下、左右、前後の障害物を検知することができます。

全方向の障害物検知はトライポッドモードとアクティブトラックの時しか作動しません。通常は前方、下方、後方の障害物検知のみ作動します。

上の写真でお気づきかもしれませんが、Mavic 2 の機体底部には LED ライトが 2 灯備えられており、日没後や夜間のフライト時には地面を照らしビジョンセンサーの効きを良くします。デフォルトでは環境光に応じて自動点灯・消灯しますが(昼間の屋外はほぼ消灯状態)、手動で常時 ON または OFF にすることもできます。

LED ライトはアームに備えられているステーラスランプよりも明るいので、夜間フライトでも機体の位置を把握しやすいと思います。

Mavic 2 Zoom の新機能や改良点はこれだけではありませんが、重要そうな部分は大まかにでも紹介できたと思います。

今年発売されたばかりの Mavic Air と比較しても、Mavic 2 Zoom はだいぶ変わっていて、Mavic Air からアップグレードすると得られるメリットは沢山あると感じました。特に安定感やフライト時間、FPV ビデオの途切れにくさや綺麗さ・には驚き、決定的な違いだと思います。カメラの画質やズームで広がる撮影の幅なども考慮すればもはや別物です(そもそもがそうなんですが・・・)。