約1.5万円の安価なGPSドローン「Hubsan H216A X4 Desire Proのレビュー、ウェイポイントフライトも可能
昨年秋に発売された中国のドローンメーカー Hubsan の小型ドローン「Hubsan H216A X4 Desire Pro」のレビューをお送りします。
Hubsan H216A は、約 1 万 5 千円と手頃な価格ながらも、GPS レシーバーを搭載しており、ワンキーリターン、フォロミーモード、自動周回、さらにはウェイポイントフライトにも対応するなど上級者向けドローンさながらの自動フライトを楽しむことができます。
機体のデザインは、他の Hubsan ドローンに見られるまるで虫が大の字になっているような外観で、外装の大半はプラスチック素材で出来ておりバッテリー込みの重量は 162g と軽量です。簡素な作りのドローンなので、フレームには若干のもろさを感じます。あくまでもトイドローンの一つなので、こういった品質は仕方のないことだと言えます。
パッケージには Hubsan H216A 本体、コントローラー、759nAh バッテリー 1 個、プロペラガード 1 セット、スペアのプロペラとネジ 1 セット、ドライバーが同梱しています。送信機にはスマートフォンホルダーが備わっており、ドッキングさせて使用します。スマートフォン単体でも操縦可能です。
価格の通り、Hubsan H216A には様々な粗悪さが見られますが、GPS に対応したドローンというだけあって、GPS の受信感度が良好な場所でのホバリングはとても安定しており、いくつかの GPS 飛行も精度良くこなし実用的なドローンだと思うほどでした。
離陸はスマートフォンまたはコントローラーの送信機をワンプッシュ。すると、モーターがゆっくりと回転し、ふんわりとゆっくり離陸します。それはまるで本物のヘリコプターのようでした。
屋外だとホバリングはまるで DJI ドローンのように安定していますが、姿勢制御は基本的に、加速度センサー、コンパス、GPS のみで行う設計のため、断続的に動きます。それでも動く範囲はせいぜい 1 ~ 2m です。この範囲内で位置を微調整しながらホバリングします。無風だと動く範囲は数十センチ程度です。この精度はおそらく多くの方にとって GPS ドローンの許容範囲内だと思います。
しかし室内だと GPS の電波を受信しづらいことから、ホバリングは全く安定しません。自身のプロペラで巻き起こす風で簡単にふらつきます。単純な離陸テストであっても室内フライトは控えるべきでしょう。
GPS による自動フライトは精度高く実行されます。分かりやすい例を挙げると、後述する「ウェイポイントフライト」では、地図に描いた飛行ルートのアイコンやラインにほぼ沿った形で飛行します。GPS の受信感度があまり良くない場合でも誤差は 2 ~ 3m です。GPS 対応ドローンを選ぶ一番の理由とも言える、「ワンキーリターン」もしっかりと離陸した地点に近い場所に戻ってきたので、ドローンを遠くに飛ばす際にちゃんと戻ってくるかどうかを不安に感じることはほとんどありません。
Hubsan H216A はスマートフォンの Wi-Fi で飛ばすドローンです。スティックやボタンの付いたコントローラーも付属していますが、いわゆる RC タイプの送信機ではありません。コントローラーはスマートフォンと Bluetooth で繋がり、スマートフォンから Hubsan H216A に操縦の指示を出します。そのため、飛行可能な距離は半径 50m とされています。これについては、電波強度を増幅させるブースターやリピーターを使うともっと遠くに飛ばせるようですが、私はこれを試していません。
Hubsan H216A の機体前方には 1080p @ 30fps の動画撮影に対応した FPV カメラが装備されており、FPV フライトや空撮が可能です。ただ、機体にジンバルは装備されていないので、もちろんカメラの映像は機体の動きに応じてブレますが、1080p なので映像そのものは比較的綺麗で、映画や CM に匹敵するレベルの画質ではありませんが、個人的な観賞用や SNS にアップする写真や動画であれば十分耐えられます。
Hubsan H216A の操縦は「X-Hubsan」アプリを使います。このアプリはほぼ日本語に完全に対応しており、何よりもメニュー構成が分かりやすいので、初心者でもすぐに操縦に慣れると思います。
スマートフォンのフライト画面には、操縦に必要なボタンや設定メニューの全て配置されていますし、FPV ビューとマップビューをワンタッチで切り替えられるのでスマートフォンの画面を見てのフライトすることも十分可能です。
ドローンを飛ばす醍醐味とも言える GPS フライトや自動フライトは Hubsan H216A でも十分に楽しめます。主な機能としては、先に説明したボタンを押すだけで遠くから勝手に戻ってくる「ワンキーリターン」や地図上をタップした場所を順に飛行する「ウェイポイント飛行」、ユーザーを追尾する「フォロミーモード」、スマートフォンの位置を中心にして半径 3m の円を描きながら飛行する「サラウンドモード」があります。1 万円台のドローンでこれらの自動フライトが行えるのは結構稀ではないでしょうか。
これらの機能によって、Hubsan H216A は様々な空撮で使用できます。中でも私がお気に入りなのは、「ウェイポイントフライト」です。
GPS デバイスやフライトシミュレーターに触れたことのある方はウェイポイントをご存知でしょう。機能そのものは上級者向けドローンであれば大抵の場合、標準で備わっていますが、安価な GPS ドローンには無いことの方が多く、ウェイポイントフライトに興味を持っている方にとって Hubsan H216A は良い選択肢の一つになると思います。
このウェイポイントフライトを使用すると、予め作成したフライトルートを巡回させることができるので、空撮用だと目的地へのフライトが簡単に行えます。
Hubsan H216A のようなトイドローンに実用性はありませんが、ウェイポイントフライトを利用すると、近い場所への小荷物の配達や牧場などの広大な敷地の巡回、ゴルフ場ではティグラウンド、セカンドショット地点、バンカーやハザード、グリーンへとコース上を飛行させたり、マラソン大会だと、チェックポイント間を巡回し空撮することが簡単に行えます。Hubsan H216A はそういったことを練習するのにちょうど良い製品です。
実際にウェイポイントフライトを体験したところ、ドローン初心者の私でも上手くフライトさせることができました。機体はアプリに描いたフライトルートをなぞるように飛行し、各ウェイポイントでは予め設定した高度と静止時間を守っていました。
それでもやはり誤差は生じますので、ウェイポイントフライトを実行する際には少しずれても問題が起きないようにルート作成をすべきです。
ウェイポイントフライトが終了すると、ワンキーリターンが自動的に作動し、勝手に自分のもとに返ってきます。一連のフライトテストで機体が墜落したことは一度も無く、今でも無傷です。
ウェイポイントフライトはとても楽しいのですが、GPS の測位が良好な場合しか作動しませんので、事前の「GPS テスト」をきっちりと完了させなければアプリ上の「起動」ボタンをタップしても実行されません。ウェイポイントフライトが上手く行かないという方はこの点を確認してください。
GPS フライト機能の一つである「フォロミーモード」は、文字通り人を追尾しながら飛行するモードです。しかし、DJI ドローンのように画像処理で人物を識別し追尾するようには出来ておらず、操縦者が持つスマートフォンと一定の距離を保つように飛行するだけです。空撮向きとは言えませんが、ちゃんと付いてくるので予想以上の出来です。注意点としては、ヘッドレスモードだとカメラの向きは固定されるので、自分を空撮したい場合にはヘッドレスモードを無効にしておきます。
自分の周りをゆっくりと旋回するサラウンドモードも予想以上に安定して飛行しています。ジンバルが付いていないので、マトリックスの象徴的なワンシーンを再現、とまではいきませんが似たようなシーン撮りが可能です。
Hubsan H216A に付属するバッテリーは 750mAh です。メーカー発表だと、フライト時間は 12 分間。テストしたところ、3 ~ 4 分間の空撮(主にホバリング)、近い範囲でのウェイポイントフライト、約 1 分間のフォロミーモードを実行したところでバッテリーが切れました。なので実質的には 10 分弱になるかと思います。
一般のトイドローンと比べてフライト時間は長いと言えますが、個人的には少し足りないと感じます。この問題はスペアバッテリーを調達すればほぼ解決する話なのですが、今のところバッテリー単体がネットに出回っておらず、現時点で調達は困難です。スペアバッテリーが必須という方に今の時点で Hubsan H216A はおすすめできません。
バッテリーに関して、Hubsan H216A はバッテリー容量の低下時に通知しますが、低バッテリー状態で自動帰還する機能は無く、バッテリーが無くなるに連れてプロペラの出力が下がり、浮上しなくなるといった挙動でしたので、バッテリー残量には注意する必要があります。フライト中にバッテリーが切れを起こすことも考えられるので、ウェイポイントフライトなどの自動フライトをさせる場合や遠くに飛ばす際にはバッテリー容量が十分の場合に行う方が無難です。
最後に、ドローン着陸時の挙動について一言。Hubsan H216A には下向きのセンサーが無く、DJI ドローンのように左スティックを下に倒しっぱなしでも安定着陸することはありません。この場合、Hubsan H216A は勢いよく地面にぶつかり、その反動で機体が大きくバウンドし再浮上します。幸いにも、機体はプラスチック製と軽量なので、まるでスーパーボールのようにバウンドをするだけなのですが、これを繰り返していると地面と接する LED ライトやフレームが壊れそうです。ワンキーリターンや自動着陸は離陸時と同様にゆっくりと降下するので、大きくバウンドすることはほとんどありませんが、少しバウンドします。バウンドするとモーターが停止しないので、接地のタイミングでコントローラーや仮想ジョイスティックを使いモーターを手動で停止させるなどのテクニックが必要になってきます。
Hubsan H216A を評価する上で価格は重要なポイントです。同様の機能を有するドローンは他にも沢山存在しますが、1 万 5 千円でこれほどまでにフライトを楽しめて、しかも墜落や制御不能に陥ることがほとんど無いことは買って良かったと思えるくらいの良い評価を与えることができます。
Source : Amazon
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